認識のズレを解消!ホワイトボード活用法

ホワイトボード活用法

「混沌の時代を生き抜く仕事力とは?!」で書いたように、筆者はビジネスにおいて「書く・描く力」は何にも増して大切だと考えています。そこで今回はミーティングなどにおいて、認識のすれ違いをいか解消するかを目的に、ホワイトボードの活用法を書くことにします。

1.ビジネスで認識のずれが起きやすいケースとは?

まずは、ビジネスの現場で認識のずれが起きやすいケースについて考えてみます。

  • 言いっぱなし/聞きっぱなしになっている

     →話した内容を言語化・数値化・図解等していない
     →理解が表面的(話を聞いているようで聞いていない)

  • 対象を特定していない  

    →話に出てくる対象(ヒト、モノ、コト、カネ、情報など)を明確に示していない

    下記のような会話表現が出ると怪しい
    例)あれどうなった、 これやっておいて、それください・・等

  • 話の途中で議題や範囲を変える

    →議題(テーマ)そのものや、話の範囲(スコープ)を変えてしまう

    ※このケースは、納期・品質・コストへの影響が避けられないので要注意
  • 以前話したことを忘れる  

    →「忙しかった」を言い訳の筆頭に、前の話を無に帰する

    下記のような会話表現が出ると怪しい
    例) 事情が変わった、そんな話もあったね、以前は以前・・等
  • 打ち合わせをほとんどしない  

    →そもそも、一度話したきりで中間の確認をせずに物事を進める
    ※忙しいという理由や極端な思い込み・自信など、チームや個人のやり方への依存度が高い場合、こうなりがち

まだまだ出そうですが、ひとまずここまでにします。

一つでも共感できそうな項目はありましたでしょうか?
書いていて、筆者も昔よくやっていたことがあり、少し胸が痛みました。。

2.ホワイトボード活用が向いているシーン

さて、ホワイトボードは普段どのような場面で利用されることが多いのでしょうか。実態をリサーチしたいところですが、ここではホワイトボード利用のメリット/デメリットを踏まえた、より有効な活用シーンについて考えます。

◉ メリット

  • 複数の人に同時に情報を伝達できる
  • 話している内容の足し引き、補正が簡単にできる
  • ニュアンスやイメージを絵や図表など、様々な表現で詰めることができる
  • ライブ感を出せる(プレゼンの時などは特に)
  • 内容をイメージで記憶してもらいやすい(この図見たことあるね!という感覚で伝わる)
  • 写真などですぐに共有できる

✖️ デメリット

  • 情報を伝達できる人数に限界がある(視認性の面では~20人くらいが限界 ※オンラインで共有できる場合を除く)
  • 場所を選ぶ(暗い/狭すぎ/広すぎ/円形の場所では使えない or 使いにくい)
  • 道具がないと使えない(ホワイトボード本体、マーカー、イレーサーなど)
  • 書く/描くのが苦手な人にとっては一定の障壁がある
  • 手や服が汚れる
  • マーカーが乾くとすぐ書けなくなる
  • 消すのがたいへん

上記をまとめると、ホワイトボードは
「複数人で」「話している内容のニュアンスやイメージを共有し」
「補正しながら」活用する際に向いている
ことになります。

逆に「大人数」や「適さない場所( 暗/極狭/ 極広/円形)」「道具が未整備」の場合は使えないツールです。しかし、環境面以外は、次節の活用のコツを押さえることで、デメリットは克服できそうです。

2.ホワイトボード活用のコツ

では、ビジネスで認識のずれが起きやすいケースにおいて、ホワイトボードをどう活用すればよいのか、そのコツをまとめます。なお、ここではグラフィック・ファシリテーションなど、高度な熟練を要する話ではなく、認識のずれをなくすために ”誰でも普通にできるコツ” について書くことにします。

(1) 必須項目を最初に合意する

打ち合わせ等で話していると、あれ?今日は何を議論してたんだっけ? 今どこに向かって話してるんだっけ? という経験って意外と多くありませんか?

人は会話を重ねるほどに、テーマや時間配分、自分の発言の位置づけ等を見失いがちです。人の思考には一定のブレ幅があり、さらにインプットされた情報でマルチに変化するので、方向性や時間という一定の枠がないと、発散し、制御不能になります。また、時に持論をぶつけることもあれば、相手の顔色を見て着地点を探る会話等もあり、中々面倒な生き物です。

言いたいことは、打ち合わせ等の限られた時間内で議論を集約するには、問われている事柄を最初にクリアにしておくことが重要なポイントになってくるということです。

ここで、魔法のように効く!とまでは言いませんが、最初に明らかにしておけば、内容がブレず、時間の効率化も実現するとっておきの秘訣があります。それも、たった3つの項目をホワイトボードに書くだけです。

”3つの項目” とは下記です。

  • タイトル → 今日は何がテーマか?
  • 目的   → 打ち合わせ終了後に目指す姿は何か?
  •        (課題の特定?、解消?、アウトプットの明確化?・・など)
  • 進め方  → 何にどれくらい時間を配分するか?

これらをホワイトボードに書いておいて、 打ち合わせの冒頭で説明し、着地イメージを”合意”しておくことが非常に有効です。(写真はイメージ)

タイトル、目的、進め方をこんな感じで書きます(例示なので内容はイメージです)

ファシリテーター:
 「今日の打ち合わせは・・(上記の3項目)・・の内容でよいですね?」
参加者:
 「はい」 or 「不明点があるので確認させてください」・・など

この一見単純なやり取りが、話の脱線やちゃぶ台返しを避ける有効な対策になります。手間がかからず、効果が出るやり方ですので、ぜひお試しください!

※10分ぐらいでサクッと話すケースでは、タイトルに目的をしっかり入れて、進め方は口頭で共有、もしくは右上に小さく書く形でもOKです(時間節約のため)
※ちなみに、パワポを使って議事を進めるときは、パワポのアジェンダに3つの項目をあらかじめ書いておくと、さらに効率がUPします

(2) 発言の記録をダラダラと書かない!

1)の項目以外でボードに書くことは、ざっくり言えば「話した内容(テキスト、数値、絵や図表で整理)」と「決定事項(主にテキストで整理)」の2つです。

発言の記録にボードの大半を使ってしてしまうと、他に書くべきこと(上記)が書けなくなります。また、記録に時間を使うと、主要な議論や結果確認のための時間を確実に奪うので、もはやデメリットしかありません。

※どうしても記録が必要な場合は、PCやICレコーダ等で記録するのがよいでしょう 話した内容と決定事項は、整理しながら書くのがベストですが、これには熟練が必要なので、とにかく「内容」「決定事項」を 堂々と真ん中に書くように意識します。

※記述やレイアウトに自信がない場合は、ボードの端の方に小さくメモするなどしておいて、後でまとめます。こうすると、うまく書けなかった時に思い切って消す(再編集する)こともできます

【記述例】左側に作業ごとのスケジュール概要を示し、右側に本日の進行と主な内容を記述
【記述例】この日は細かな課題解消が焦点だったため、解消した内容を記述し、1つずつチェック

3) 道具をうまく使う

ここで触れる道具は、主にマーカーとイレーサーです。
筆者はコンサルタントとして複数の企業にお邪魔する立場なので、ベストな対応がどこでもできるように、数種のマーカー、小型のイレーサーを常に持ち歩きます。(写真)

中身はマーカー(5色/中字平芯、中細字丸芯、極太、極細・イレーサー付き)+交換用インク1本。これらをジップロックに入れてコンサルの時に携行

下記に筆者が実践している使い分けの例を示します。

<マーカー>
多くの会社では、3色(黒、赤、青)のマーカーがだいたい常備されているので、この使い分けをしない手はありません。

マーカー色・・ 一般的な使い分けのルールはありませんが、明度を意識して使うのがポイントです。 明度が低い色(黒)は、通常の明るさの部屋ならボード面(白)とのコントラスト差が一番大きいため、視認性が良くオールマイティーに使えます。明度が高い色(赤)は、鮮やかで目立つ反面、発散するため輪郭が伝わりにくく、スポット使用向きです。多用すると見る側の負担が増すので注意が必要です。青はその中間と考えればOKです。
色は上記3色以外で、緑、オレンジを揃えておくと、表現力がさらにupします。

ペン先の形状・・ペン先は、黒は「中字平芯」が万能でオススメです。文字を書くときは、一番尖った箇所で書き、平らの部分で、表の外枠や境界線を引くといった使い分けができます。

ご参考までに、タイプごとの使い分けを下記にまとめます。

【参考】マーカーのタイプごとの使い分け(パイロット、ボードマスターの場合)
  ・黒(中字平芯)・・通常の文字を書く場合に使用
  ・赤(中細字丸芯)・・重要ポイントのマークや書き込み ※多用しない
  ・青(中字平芯)・・枠や矢印など流れや所在の整理、文字の強調
  ・黒(極太)・・タイトルや範囲の明示など、強く意識してほしい所に使用
  ・各色(極細)・・図形や細かな仕様記述、補足説明の記載など
  ・緑 (中字平芯)・・注目ポイントや注釈など ※赤と対で使用も有効
  ・橙 (中細字丸芯)・・注目ポイントや注釈など ※青と対で使用も有効

<イレーサー>
イレーサーは大型のものであれば、フェルトを剥がして何度も使えるタイプが、ボードを痛めにくいのでおススメです。特にボードマスターの極細タイプは、ヘッドに小型イレーサーがついているので、ちょっとだけ消すときはこれが便利です。また、点線や表をきれいに書きたいときなどにも使えるのでかなり重宝します。

<ホワイトボード本体>
本体は様々なタイプがあるので、ここでは割愛しますが、可能なら、なるべく面積の広いもの、表面が傷つきにくいものを選ぶとよいでしょう。持ち運びできるものとしては、ホワイトボードシートを貼ったスケッチブックやA2の大きさに展開できるバタフライボードなどが議論を進める上では便利です。(写真)

【左】スケッチブックの表紙にホワイトボードシートを貼り付けたもの(自作)
【右】中央部にマグネットが付いていて、展開可能なバタフライボード(市販)

(4) 公式記録として利用する

セキュリティー上、写真を撮影してはいけない等、会社では様々なルールがあるかもしれませんが、打ち合わせ結果の共有にベストな形は、ホワイトボードを公式記録として利用できるようにすることです。具体的には下記の手順で活用を進めます。

  • 話した内容をテキスト、数値、図解などでまとめ、タイトルの横に日付を記載(必要に応じ、参加者名等も記載)
  • 打ち合わせの最後にラップアップの時間を取り、内容につき、漏れや誤り、過不足がないかを確認
  • 内容が決定事項の場合は「担当」「期限」「アウトプットの内容」について確認し、記載
  • 最後にホワイトボードの写真、もしくは付属のプリンターやメモリ等で記録し、打ち合わせ終了後すぐ関係者に共有(すぐ共有が難しい場合は、各自写真を撮るなどで対処)
  • 次回の打ち合わせ準備や、打ち合わせの冒頭などで、上記の記録を確認し、内容を吟味

(5) 道具を大切にする/こだわる

いざ、ホワイトボードを書使おうと思ったときに、マーカーのインクが切れていて「薄くて書けない!」となった経験、皆さんもあるのではないでしょうか。
他にも、書く面が汚れていたり、イレーサーでこすって逆に汚れてしまうなど、「書く/描く」気持ちを削いでしまう ”物理的な障壁” は、結構あります。

解決策は、道具を常に使える状態にしておくこと に尽きます。
一流の職人さんは道具の手入れを怠らないもの。手入れが行き届いている会社は自ずと議論ができる状態になっているはずです。

ホワイトボード本体に関しては、日常的に手入れが必要です。よくあるパターンとして、書いたものを消さずに取っておいて、インクが乾いて消えなくなってしまい、後日、イレーサーでこすって消した時に、書く面に細かな傷がついてしまうことです。以降、だんだん書きにくく/消えにくくなっていくので、書いたらすぐ消す習慣が必要です。

道具のお手入れ方法(特にボード本体)は、材質によって異なるので、メーカーの取り扱い説明書を参照いただくのがベストですが、以前ワークショップを行った際に、筆者なりのポイントをまとめたものがあるので、よろしければご参照ください。

★ ホワイトボード・ドローイングスキルアップWS/資料

(6) やってはいけないことを理解する

活用の際にやってはいけないことも、きちんと把握したいものです。下記に筆者が気を付けているタブー事項を示します。

× 小さな文字で書く
 →程度の問題ですが、たくさん書こうとして、その場にいる人に見えない大きさで書くのは、理解を妨げるのでNGです。

× 途中で確認や合意を取らない
 →ボードに記述した内容は、認識のずれを埋めるためのものなので、ニュアンスを少し変えて書いた時などは、その内容(テキストや図表の構成など)について確認や合意が必要です。

× マーカーの色を混ぜる
 →違う色で線を交差させると、明るい色は特にくすんでしまい、色分けの意味がなくなります。マーカーは色を重ねない!のが大原則です。

× 指で消す
 →手が汚れることもそうですが、ボード面に手の油がつくとその上に書きにくくなります。また、ボードに対してインクを薄く伸ばす行為なので、かえって汚れて見にくくなります。指で消す代わりに、細いマーカーのヘッドに付いている小さなイレーサーを使うのがオススメです。

× 途中で断りなく消す
 →これ、経験ありませんか?途中で写真を撮るなどで記録するなら別ですが、理解や合意が済んでないうちに、(勝手に)消してしまうのは、理解に費やした時間が無駄になるため、最も避けたいことです。

(7) 練習する

ここまではすぐに実践できる内容でしたが、より認識のずれをなくすようにするためには、やはり練習が必要です。特に苦手意識のある方は「絵心がないから」「字が下手だから」等とおっしゃることが多いですが、絵が描けなくても図形(○□△)は書けますし、字が多少下手でも見やすく書くことは練習次第でできるようになります。

ちなみに、筆者は社会人大学院に通っていた頃、授業や勉強会の場で、とにかく書いて書いて書きまくりました。

練習を繰り返すと、ボード空間に対する面取り(どこに何を配置するか)やマーカーの使い分け、背中で聞いたことを解釈しつつ、その場で整理して書く(筆者はシャドウ・ライティングと勝手に呼んでます)などができるようになってきます。

様々な記述の例

いかがだったでしょうか?流行りの(難しい)手法を頑張って学ぶ前に、認識のずれをなくすためにできることは沢山あります。今回の内容を参考に、ぜひトライいただければ嬉しいです。

shuCEO
シーズメッシュ代表取締役


学生時代にアートを学ぶ。IT企業に就職し、40数件のプロジェクトを経験。悩みながらもプロジェクト成功確率を上げる管理手法を編み出す。品証、PMO、IPA研究員、改革リーダーを経験した後、アート×サイエンスによるコンサル&プロデュースを行う会社を設立し、現在に至る。