混沌の時代を生き抜く仕事力とは?!

1.”今” の時代背景

まずは、時代背景から。

現代はVUCA(ブーカ)(*1)の時代といわれ、一昔前に比べ、企業/個人によらず、激しく変わる環境への適合を求められることが当たり前になってきました。

直近のニュース(*2)を見ると、国際情勢や企業関連の話題をはじめ、犯罪や社会問題、先進技術の話題など日々刻々と目まぐるしく情報が飛び交っています。グローバルには、気候変動や国際紛争、食糧問題、水資源の危機、移民問題など、さらに危機や脅威に関わるニュースが加わります。

メディアは話題性を演出する傾向(最近は極端に煽る傾向?)があるので、流れてくる情報だけで時流は語れませんが、少なくとも、玉石混淆の膨大な情報から「ファクトを見極め、自分の頭で考える」ことは必須と言えます。

ニュースをさらにビジネス領域に絞ってみると、見えてくる傾向も変わります。
たとえば、IT業界では、おおむね下記のようなニュースが並んでいます。

● ニュースリリース(新サービス、提携や買収、レポート・・など)
● 技術トレンド(AI、IoT、マイクロサービス、VR、AR、ブロックチェーン、量子コンピューティング、エッジコンピューティング、マルチクラウド・・など)
● ビジネスモデルの解説(新しい電子マネーの仕組みとか)
● セキュリティー関連(サイバーテロ、個人資産の攻撃、企業の情報漏洩・・など)
● システムトラブル関連(システム止まった、ネット使えない、カード処理できない、飛行機乗れない・・など)

IT業界の特性上、一般的なニュースに比べれば、事実に基づく情報が多く、技術トレンドや新サービスの紹介など、近未来的でお金になりそうな情報もあり、一見、華やかな印象です。しかし一方で、セキュリティーやシステムトラブル関連のニュースも毎日必ず登場し、人類がかつて経験したことのないリスクが存在することも確かです。

VUCA

*1: VUCAとは、Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をつなぎ合わせた造語で、これら四つの要因により、現在の社会経済環境がきわめて予測困難な状況に直面しているという時代認識を表す言葉です。もともとは1990年代のアメリカで冷戦終結後の複雑化した国際情勢を意味する軍事用語として使われ始め、2010年代には経営やマネジメントの文脈においてもとりあげられるようになりました。今年1月に各国の要人を集めて開催された世界経済フォーラム(通称ダボス会議)でも、世界の現状を指す「VUCAワールド」というキーワードが盛んに使われました。想定外の事象が次々と発生するVUCAの時代を、個人と組織が生き抜くための人材論・組織論にも注目が集まっています。

「日本の人事部」より https://jinjibu.jp/keyword/detl/830/

*2: 試しに2019/2/1付けのYahoo!ニュース、トップ記事を計測してみたところ、下表のような結果になりました(分類は主観によるものですが、極力ブレにくい項目に整理してあります)
筆者が驚いたのは「中立的な事実の伝達」の記事比率が件数ベースで約10%程度と少なかったことです

yahoo!ニュース-2019/2/1 22:30 ー 主要カテゴリの記事分類
yahoo!ニュース-2019/2/1 22:30 ー 主要カテゴリの記事分類

2.現代に求められる仕事力とは

さて、このような時代背景において、ビジネス戦線を生き抜くためには、どのような仕事力が必要になるのでしょうか。

VUCAかつ情報が錯綜し、不安や不信が渦巻く中、まず間違いなく必要なものは「変化に適応する力」です。もう一段落とし込むと、「ファクトを見極め」「問題の本質を掘り下げて」「先を見通しつつ」「事を成すまで行動し続ける」ことが重要と筆者は考えています。

そうは言っても、まだまだ抽象度が高いので、「具体的にどのような力を付ければよいのか?」という声が聞こえてきそうな気がします。

次節では、変化に適応し、ビジネスで勝ち残るための力について、 もう少し具体的に書いてみます。

3.混沌の時代を生き抜く仕事力-2019ver.

(ここで書く内容は、筆者が深く関わった国内数百のビジネスパーソンとのやり取りを通し、これはぜひ鍛えるべきと思った項目の2019年版です。私見バリバリですので、何卒ご了承ください)

①書く・描く力

とにかく書く・描く力が圧倒的に不足していると思います。打ち合わせで聞いた内容を書く、微妙なニュアンスを図や表にする、全体の構造を絵で描くなど、相手がわかってくれているはず、たぶん伝わったと思う、という場面で、書く・描く力を生かせば、認識の齟齬、ズレは格段に減少します。

書く・描く力

②みる・きく力

物事をありのままに捉えることが、この力の本質です。人は、ついつい自分の思いや価値観などのフィルターを重ね合わせて物事を捉えがちです。試しに、行動観察や傾聴を実践してみれば、みる(見る・観る・診る・視る)、きく(聞く・聴く)技術に磨きがかかり、ヒアリングや面接等のスキルUPが実感できることでしょう。

みる・きく力

③ひも解く力

問題を掘り下げて、原因を突き止め、根本対策を取る際に欠かせないのが、ひも解く力です。この力は、組織やチームの文化が大きく作用することが多く、問題が大きくなる程、関係者全員で、粘り強く取り組んでいく必要があります。問題解決がうまくいかない場面では、ひも解く力が十分発揮できていない(問題をそのまま放置している)ことがほとんど、と言っても過言ではありません。
【関連】問題分析がうまくいかない理由

ひも解く力

④はかる力

みる・きくと同様に、「はかる」も日本語では様々な意味が存在します。ざっくり分けると、尺などをはかる(計る・測る・量る)と、物事を先に進める意味合いのはかる(図る・謀る・諮る)です。いずれも明確な意思を持って実体を捉えることが基本にあって、対象によって柔軟にアプローチを変えるのが、はかる力の共通点です。

はかる力

⑤見わたす力

偏見を恐れずにいうと、実は日本人に最も足りないんじゃないか、と思うくらい、筆者が鍛える必要性を感じているのがこの「見わたす力」です。全体を鳥瞰すること、視点や視座を自在にコントロールすることにより、現状判断や将来予測を的確に行うことができるのが、この力の特徴です。
【関連】ガバナンスマネジメントとは?

見わたす力

⑥回復する力

不利な状況から回復する力(レジリエンス)は、 状況が刻々と変化する世の中においては、イメージして鍛えておく必要がある力です。やる気、モチベーションの維持や、苦手な状況の克服など、常に有利な状況が得られない場面では、特に重要なスキルになります。

回復する力

⑦続ける力

諦めない、成功するまでやり続ける、コツコツ積み上げる力は、地味ながらHBRでも取り上げられるほど、重要な力です。たとえば、改善活動の場合、多くの組織やチームで2~3ヶ月めに最初の試練がやってきます。会議の欠席が増えたり、課題対応に時間を割かなくなったり、メールのレスポンスが悪くなるなどです。こうした一種の飽きや疲弊を乗り越える力は、サバイブには不可欠です。

続ける力

※今回ご紹介した7つの力は、「常勝PMは育成可能か」というテーマで講義をさせていただいた際に公開した内容を、2019版としてupdateしたものです。2019年版(常勝体質をつくる7つの能力)はこちらのDLコーナーで確認いただけます

以上、筆者の私見による7つの力のご紹介でした。これでもまだ抽象度が高いかもしれませんが、今回はここまでとし、詳細についてはまた書きます。

shuCEO
シーズメッシュ代表取締役


学生時代にアートを学ぶ。IT企業に就職し、40数件のプロジェクトを経験。悩みながらもプロジェクト成功確率を上げる管理手法を編み出す。品証、PMO、IPA研究員、改革リーダーを経験した後、アート×サイエンスによるコンサル&プロデュースを行う会社を設立し、現在に至る。