プロジェクト支援サービスの提供価値(代表・本間インタビュー)

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(聞き手・文:御代貴子(ライター))


プロジェクトの“成功”こそが唯一のゴール


――プロジェクト支援サービスの概要を教えてください。

本間 プロジェクトとは「企業において何らかのミッションをもった仕事を遂行するときに編成するチーム」のことです。チームと言いましたが、メンバーが一人の場合でもプロジェクトです。

シーズメッシュのプロジェクト支援は、プロジェクトを成功に導くためのサービスです。プロジェクトの成功とは、一般的に言われるQCD(クオリティー、コスト、デリバリー=納期)に加え、S(製品やサービスの提供価値)のすべての要素が計画通りに着地することだと当社では考えています。※1

メディアの情報を調べると、プロジェクトの成功確率は30%~50%とされていることが多いようです。こうした情報は主にQCDの達成を成功と捉えているケースが多いのですが、これにS(製品やサービスが狙った目標に対してどうだったか)を加えると、成功確率はせいぜい10~30%ではないかと推測します。正確には企業におられる皆様の実感(感覚値)や実績(事実)をお聞きしたいところですが、あくまで私個人の体感では、成功確率は2割に満たないのではと思っています。

当社は、時にはプロジェクトの枠を越え、関係組織の役割・体制の調整や意思決定プロセスの明確化、重要テーマや会議体のリード、マネジメントに必要な道具立ての整備など、プロジェクトの成功に不可欠と思われるあらゆるご支援を行います。“あらゆる”とは“言われたことを何でもやります”という意味ではなく、当社が培った経験を踏まえて、成功確率を上げるあらゆる手立てを取るということです。保身のためではなく、それほど覚悟を決めてやっていると言いたかっただけです(笑)

※1 ここではプロジェクト単体での「成功」に限定して書きましたが、実際は会社全体でのP(利益)、V(価値)の創出も併せて考えていく必要があります。

――どのようなお客様がサービスを活用されるのでしょうか?

本間 様々な業界、業種、業態のお客様にご活用いただいています。お客様の多くは規模の大きなプロジェクトの運営やプロジェクト間の連携で悩まれているため、自ずと大規模かつ複数プロジェクトのご支援が中心になっています。

中でも、会社が成長路線にのって、プロジェクトの規模が大きくなり、かつ難易度も上がってきたけれど、マネジメント層の育成が追いつかないとのご相談はよくいただきます。人材育成の課題について詳しくお話を伺うと、そもそも組織的にプロジェクトを回す仕組みや体制ができていないというケースも少なくありません。

プロジェクト管理の枠組み(器)がない中で、人材育成や資格取得(中身)にだけ注力しても、実行性/実効性は上がらないので、両方とも取り組んでいく方向付けが重要だと思います。

最近では、PMO(プロジェクト運営を支援する機能)を設置して、PM+PMOチームでプロジェクトを回すことが多くなってきました。手軽に利用できるサービスも増えており、猫の手も借りたいほど忙しいプロジェクトマネージャーにとってこれほどありがたいサービスはないのですが、注意しなければならない点もあります。

ひとつは、定例会議のファシリや、課題管理の運用をお願いするのはいいとして、課題の発見やその対策の妥当性の判断まで丸投げしてはいけないということです。定例会議などで決まったことが十分に課題化されず、フォローもされなかった結果、突然問題になることは多く、PMが見切れていなかったケースも多く見受けられます。

もう一つは、プロジェクトの規模が以前の経験値よりも大きくなった場合に、PMOを増員して、プロジェクト運営の取り回し(課題やレポートの集計、会議体の運営)を効率化する際の注意点です。規模が小さいうちはプロパー社員が統制できたことも、金額が大きいプロジェクトになってくると、組織間調整やベンダー統制、複雑性の高いリスク対策が必要になってくるので、運営面の効率化だけでは太刀打ちできません。

いずれにしても、付け焼き刃で対策を進めるのは得策ではありません。課題をつぶさに捉えた上で、戦略的にプロジェクト成功確率が上がるようにしていく必要があるのです。


問題の構造理解と課題解決アプローチの重要性



――よくあるプロジェクトのお悩みは、どのようなことですか?

本間 前述の人材面の悩みに加えて、見積りがうまくいかない、スケジュールが常に遅れてしまう、品質に問題があるなどの悩みが多くあります。加えて、複数プロジェクトの掛け持ちが大変、組織間や上層部とのコミュニケーションがうまくいかない、ベンダー管理に悩んでいるなどのお悩みも比較的多く伺います。

組織全体では、トラブルが頻発する、問題の発生が予測できない(問題が突発的に起こる) 、改善に取り組む時間がない、マネージャーが育たないなど、深刻度の高いお悩みが寄せられます。

こうしたお悩みはいずれもある断面で起きている事象であり、「こうすればすぐに解決します」とは言い難いことがほとんどです。

目に見える事象は、複雑に絡み合った個々の「問題」が作用し合って「トラブル」に発展する構造になっています。(下図「問題の構造」参照)

たとえば、納期が大幅に遅れてしまう、システムが何度も停止する……といった事象は、過去に起きていた問題を放置したために、複数の問題が複雑化して起きるものです。ところが日常的に問題に向き合っていない現場はとても多く、大きな問題(=トラブル)になって初めて「たいへんな問題が起きた!」と認識されることも珍しくありません。

当社へご相談をいただくタイミングで、既にプロジェクトでトラブルが起きていたり、リスクが放置できないほど大きなものになっていたりするケースもよくあります。

<問題の構造>


――問題に対して、どのようなアプローチで解決していくのですか?

本間 問題を丁寧に分解し、まずは課題を整理(言語化)した上で構造化します。構造化とは、ひとつの問題がどのような課題の要素で構成されているか、それぞれがどのように作用し合っているかを可視化したものです。次に、1つひとつの課題に対して、具体的に対応するための行動(アクション)を書き出し、対策の大枠を決めていきます。さらにそのアクションは誰がいつまでに行うのか、対応の優先順はどうするのかなどを決めていきます。

これらは地味で手間のかかることですが、課題の発見から解決までのアプローチはプロジェクト運営の最重要事項であると考えており、腰を据えて取り組んでいます。

このアプローチを重要視しているもう1つの理由があります。それは、将来起こりうる問題(=リスク)への対処にもつながるからです。今起きている問題は、これまで放置してきたリスクへの対処を怠ったことに他なりません。たとえば、「来月には要員が足りなくなりそう」「このままだとスケジュールが遅延しそう」といったリスクを放置すると、たいていはどこかの段階で問題として顕在化するはずです。

リスク対応は意識から抜けがちで、プロジェクト計画作成時にリスクを抽出したら、その後は放置されてしまうことが少なくありません。リスクを洗い出した安心感や、そもそもリスク対策の重要性を認識していないことが原因ではないかと推測します。

リスクは、その対策を考えるところまでは特有のアプローチを取りますが、確実な防止や軽減策は、「問題」と同じように、課題を整理してアクションを落とし込むことです。リスク管理と課題管理は常に密接に連動しているのです。リスク対策を課題として管理した上で、その対策を確実に実行し、リスクを低減できて初めて、「リスク対策は完了した」といえるでしょう。

そして、プロジェクトはどんなに完璧な計画を立てても、計画は必ず変動するものです。計画を変更したらリスクも見直しすべきですが、この意識が抜けがちなので注意したいところです。

課題管理は、人間の身体で例えるなら脈を測るようなものです。課題管理を放置している状態は、課題に関わる残件や期限遵守などの状況が何も変化しない(脈を打っていない)ということです。脈を打っていないプロジェクトは、生きているプロジェクトとは言えませんよね。(笑)


プロジェクトをマクロに俯瞰する


――課題管理の他に、プロジェクトを成功させるために必要なことはありますか?

本間 プロジェクト全体を見渡す視点も欠かせません。日本人は真面目な性格で、目の前のタスクは一生懸命やるものの、プロジェクト全体を見渡す意識が欠けがちです。ゆえに、チーム間に落ちてしまった問題が放置されたり、ベンダーとの認識違いが解消されなかったりします。チーム間や企業間にまたがる課題やリスクは見落とされがちです。「見えない」だけでなく、互いの利害関係も影響して「見たくない」「見られては困る」状態かもしれません。だからこそ人の意識に頼るのではなく、マクロに見渡せる「仕組み」を用意し、最低でも「ひとまず見える」ようにすることが必要です。


<定着のステップ>


――マクロに見る仕組みとは、どのようなものですか?

本間 複数プロジェクトの状況を一元化し、組織全体で課題の進捗状況が一目で分かる仕組みをご提供します。当社では「課題管理クラウド」の仕組みを展開していて、課題と担当者、進捗を入力していただくことで一元管理が可能になります。ガントチャートやスケジュール管理表だけではプロジェクト管理をするには不十分なため、このような仕組みを用意しているのです。

クラウドのような仕組みと併せて、プロジェクト管理の考え方、問題の構造、課題を管理する意味、スケジュール作成のポイント、レポーティングのロジック、会議体の設定など、場面ごとに必要な手法もお伝えします。フレームワーク(課題管理の仕組み、レポートやスケジュールの組み方のサンプルなど)やナレッジもご提供しつつ、お客様が実行可能な状態に定着するまで伴走し、最終的には、当社のご支援が終わってもお客様が困らない状態を目指します。

課題をはじめとした情報が一元化されていると、定例会議も単なる進捗報告ではなく、今後のリスクと備えについての建設的な議論に時間をかけられます。たとえば、進捗報告を2割程度の時間で終え、残り8割の時間は今後の見通しや必要なアクションの議論に費やすといった形です。対策が取れていない課題に即座に対応でき、深刻な問題に発展する前に解決に導けるからです。特に言いたいのは、決定事項がない会議は開かなくてよいということですね。2時間話して何も決めない会議って、ほとんど時間の無駄だと思います。(笑)

――プロジェクトメンバーの認識を揃えることも重要になりそうですね。

本間 そうですね。大企業では、プロジェクトのプロセスを社内で定義した「型」がありますが、型だけでは不十分なんです。考え方や手法、判断基準も全メンバーの認識を揃えなければいけません。判断基準とは、進捗管理であれば、例えばタスクに着手したら進捗5%、自分のタスクが終わってチェックに回したら25%、一度目のフィードバックが来たら50%にする、といったことです。この基準が人によってバラバラでは正しく管理ができません。進捗90%の課題が多く順調に進んでいると思っていたらチェックが滞っていた、ということも起こりえます。型があってもプロジェクトが失敗するケースは珍しくありません。

課題やリスク管理は地道なことばかりですが、愚直に、しっかり続けると本当に効果が出ます。「プロジェクトを成功させるには、課題管理が非常に重要!」とおっしゃるお客様も着実に増えてまいりました。


科学的な手法でプロジェクトを円滑に進める


――課題管理クラウドを使うと、どのようなメリットがあるのでしょうか?

本間 課題をデータ化して定量的に分析し、課題の発生確率や傾向を予測してプロジェクトを管理できるようになります。人間で例えるなら、今このくらい体調が悪いのなら、明日には熱が出る可能性があるから今日のうちに薬を飲んでおこう、といった対処ができるようになるのです。複数のプロジェクトでデータを蓄積していくことで、予測の精度も上がっていきます。当社では、蓄積したデータの傾向を見ながら、先々の予測精度を上げていくための科学的なプロジェクト管理を目指しています。

今後は、解決が滞っている課題はアラートで知らせたり、今後起こりうるリスクについて、プロジェクト規模に応じた内容をデータから推測できるようにしていきます。将来的には、AIを用いてこれらが自動化されることを目指しています。


<課題管理クラウドのダッシュボード>


プロジェクトは規模によって動かし方が異なる


――多くのプロジェクトマネージャーが抱えている課題はありますか?

本間 冒頭でも触れましたが、小規模のプロジェクトでは成功したのに、規模が大きくなったり複数プロジェクトをマネージしたりすると、とたんにうまくいかなくなるケースがあります。これは、小規模プロジェクトと同じマネジメント手法で大規模プロジェクトを進めてしまうことが原因です。プロジェクトは、奇数単位で難易度が増すと言われています。例えば、金額規模が1千万円のプロジェクトはチームが1つですが、3千万円になると複数チームになり、5千万円になると社外のベンダーも入ってきて、1億円だと海外にもチームがいる……といったように、大きくなればなるほど自分がプロジェクトを全て見る体制ではなくなります。

規模が変わっても安定的にプロジェクトの姿を捉えるためのポイントは、情報伝達です。プロジェクト規模が大きくなり情報量が増えても、小さなプロジェクトで行っていた情報伝達のやり方のまま進めてしまうと、スピードが鈍化し、メンバーに正しく&タイムリーに情報が伝わらなくなります。3千万円以上の規模になれば、自分以外にもチームの中核として動いてもらうメンバーがいるようになるので、このような現象が顕著になってきます。


<プロジェクト規模による特性の違い>


さらに、ベンダー管理に悩んでいるプロジェクトマネージャーも多くいらっしゃいます。特に請負契約では仕事のプロセスを都度確認しにくいものですが、課題の対応状況は逐一連携してもらうなど、仕組みを使ってコミュニケーションを密にしないと、トラブルになるまで問題に気付けないことも起こりがちです。

その他、見積もりで失敗する、要件定義がうまくいかない、といったお悩みも多く伺います。IT企業で多く行う要件定義は、仕様を確定させるまでに時間がかかりがちで、スケジュールが遅延しているために確定前に開発に入ってしまい、後々手戻りが発生することが少なくありません。当社では、見積もりや要件定義においてもプロジェクト規模に応じた型と考え方、手法、判断基準がありますので、材料をご提示しながらご支援いたします。

ジョブ型の導入や働き方の多様化が進み、部門横断や複数企業でプロジェクトを組んで仕事をすることは今後増えていくと思われます。プロジェクトは課題管理が肝です。当社のノウハウをご提供し、お客様の社内で実行できるまでご支援させていただき、プロジェクトの成功に寄与したいと思います。

お客様の課題に基づく最適なご支援をアレンジさせていただきます。

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